ザ・達人のオシ本

素人庖丁記

嵐山光三郎[著]

講談社

■今月の選者:三原寛子(南風食堂)

料理はもちろん、料理本も大好きな私が、最近、とくに面白いと思うのは、“プロの料理人ではない、でもものすごく食いしん坊な人”が書いた本。なかでもイチ押しの嵐山光三郎さんのエッセイは、とにかく食への情熱と妄想力がすごいんです! “魯山人との(妄想)茶漬け合戦”や、“茄子を枝のまま糠漬け”、“豆腐の擂粉木”、“カレーのお風呂”、“こんにゃくで作った鍋”など、普通は思いつかないことばかり。しかも、軽妙な語り口と文章力のおかげで、“いろんな出汁がしみたこんにゃくをひと口かじったら……”なんて、いつのまにかこちらまでその妄想に浸ってしまうのです。そしてこの本の素晴らしいところは、まずくなってしまった料理も失敗も否定しないこと。それすら初めての味として楽しんでいたり、まだ改良の余地があると逆にワクワクしたり……。嵐山さんは雑誌『太陽』の編集長だったので、いろいろ勉強もされているはずだし、この本にも古書や史実からの引用がたくさんあるのだけど、それでもインテリ・洗練方向に向かわず、まるで子どものような好奇心と衝動を常に忘れない。中学生の頃に出会って以来、折にふれ何度も読み返していますが、この本の“常識にとらわれず、胃袋の求めるままに挑戦してみる”ところは、私自身すごく影響を受けているなあと思います。


以前、あるイベントで“スイカでベッドをつくってみんなに寝てもらい、その上で見た夢を教えてもらう”ということをしたことがあります。スイカが好きすぎてやったことなのですが、今思うと、嵐山さんの「なんでもあり」の影響を受けていたのかもしれません。スイカのベッドはひんやり冷たくて、みなさま熟睡。最後の日にスイカ割りをしました。

プロフィール)
みはらひろこ(なんぷうしょくどう):1974年生まれ。小岩里佳との料理ユニット『南風食堂』にて活躍。活動内容は食に関する企画提案や編集物の制作、雑誌やWEBでの料理紹介、さらに商品開発や店舗のディレクションなど多岐にわたる。著作は「南風食堂のホールクッキング!」、「乾物の本」、料理を担当した「ココナッツオイルの本」など多数。2017年秋、東京・新木場にオープンする複合施設”CASICA”内のカフェでは料理のディレクションを担当。薬膳や食養、世界各国料理を組み合わせた料理をデリスタイルで提供予定。
http://www.nanpushokudo.com

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