作家の読書道

遠田潤子さん

―いちばん古い読書の記憶を教えてください。
子どもの頃に家にあったおとぎ話の本です。「浦島太郎」や「桃太郎」といった日本の昔話に加えて、「百合若大臣」「渡辺綱」の鬼退治の話や「安寿と厨子王」、奈良の中将姫のお話や仏教説話なども入っていました。それが最初の愛読書でした。小学校低学年の頃だったと思います。

―遠田さんは、好きな本を読み返すんですね。
そうです。わりと気に入ったシーンを何回も読んだりしています。大学生の頃、ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』を読んで衝撃を受けました。自分の好きな小説ベストテンに入るんじゃないかと思うくらいに。怪奇小説集が好きだったんですよ。それで、短編のアンソロジーとか、早川書房さんの『幻想と怪奇』とか東京創元社さんの『怪奇小説傑作集』あたりを読み漁(あさ)っていました。

―卒業後はどうされたのですか。
就職して普通にOLをやっていました。その頃からようやく文豪を読めるようになりました。23、24歳で『罪と罰』を初めて読んで感動して、物語に暴力的に圧倒される感じがありました。私にとってあれは恋愛小説の位置づけなんですよ、私の中で恋愛小説の第1位は『罪と罰』、2位は『嵐が丘』、3位が『うたかたの日々』です。
その後はもう文豪シリーズで、漱石の『それから』ももう一回読み返してみて「こんなに面白かったの」と思いました。森鷗外は『阿部一族』を読んだらまったく見方が変わりまして。大学時代に愛読したクライストという作家の『ミヒャエル・コールハースの運命』と同じくらいの衝撃でした。

―古今東西、いろいろ読まれていますよね。
その後、結婚して忙しくてあまり本を読めない時期がありました。35歳くらいになって、パトリシア・ハイスミスを初めて読みました。『プードルの身代金』。それにまた衝撃を受けました。その時期に髙村薫さんも読み、久し振りに日本のミステリーを読んで「ああ、面白いな」と思って。そのあたりから、小説家を志しました。

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