みんなのオシ本レビュー

テーマ:時代のヒーローの本

一般的に思われている勝者からではなく敗者の目で描く歴史物語

トマトさん

神奈川県

火怨 北の燿星アテルイ(上)(下)

高橋克彦[著]

講談社文庫

 歴史好きで同年代の友人たちにも「歴史に詳しいよね」と言われていた私でしたがこの本を読むことにより、いかに自分の歴史観が偏っていたかが思い知らされました。勝者は自身の欲を正当化しようと敵をいかに野蛮で無知で教化の必要があるのかを公言し、戦争をしかける。しかし、敗者側・蝦夷(えみし)の阿弖流為たちにも言い分がある。自分たちの尊厳を守りたい、平和に暮らしていきたい。勝手な勝者の思惑で略奪の対象にされてしまう理不尽さ。蝦夷の心・尊厳・大地を守るために立ち上がった、誇り高き阿弖流為たちの戦いの歴史を活写している。朝廷に屈服させられたとはいえ、蝦夷の心は、阿弖流為たちによって後世に受け継がれていく。蝦夷の歴史を動かした阿弖流為たちの歴史物語でもある。

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