みんなのオシ本レビュー

テーマ:いいお酒の本

吾輩も飲みたいのである

佐藤ユンコさん

千葉県

吾輩は猫である

夏目漱石

新潮文庫

有名な書き出しで始まるこの小説を聞いたことのない人はほとんどいない気がする。猫の一人称で語られる滑稽な人間社会の風刺物語。素直な犬ではなく、気取った猫が冷静に人間を観察して語る設定からして、読者はおかしみの世界へと誘われる。では、結末は? ばらす気はないが、締めで酒が登場するのだから仕方ない。「何だか気がくさくさして来た。ビールでも飲んでちと景気をつけてやろう」などと人間のように猫が言うのだ。人間は飲みたい時に酒を飲む。下戸でも飲みたい気分の時がある。人間について偉そうに語ってきた猫の辿り着く先が、人間臭さの象徴のような「酒」だったところに、この小説一番のおかしみを感じた。「いいお酒」ではなく「お酒っていい」と言いたくなる、千鳥足の迷作だ。