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12月のセレクト

角田光代さん

PROFILE

1967年神奈川県生まれ。90年「幸福な遊戯」でデビュー。2003年「空中庭園」で婦人公論文芸賞、05年「対岸の彼女」で直木賞、06年「ロック母」で川端康成文学賞、07年「八日目の蝉」で中央公論文芸賞、12年「紙の月」で柴田錬三郎賞など受賞歴多数。今年「源氏物語 上」(河出書房新社)を刊行。来年5月に「源氏物語 中」が刊行予定。

角田光代さん の
オシ本は・・・

『見知らぬ場所』ジュンパ・ラヒリ[著]小川高義[訳]/新潮クレスト・ブックス

恋愛・親子愛・友情・敬愛・偏愛等々、選本テーマである「愛」の、それぞれみなさんの受け取り方がとても興味深かったです。書評タイトルが総じてあまりよくなかったのが残念に思います。でも書評本文を読んで、「この本は読んでみたい、読もう」と思えるものがいくつかあり、うれしかったです。読み手にその気持ちを喚起させることが、書評の最大優先事項だと私は思っています。

角田光代さん のオシ本

愛という言葉が先にあって、それに見合う感情があるわけではない。ある尋常ならざる心の動きを、無理矢理にまとめて「愛」という言葉に押し込めただけだ。だから、一応は愛と言われているが、そこからはみ出す感情や心の動きのほうが、圧倒的に多い。ジュンパ・ラヒリのこの短編集は、そのはみ出した部分を、ひとつひとつ小説というかたちに整えている。言葉にならないものに、この作家は言葉を与えていく。私がとくに勧めるものは『地獄/天国』。ここに描かれたほどの激しいひとつの「愛」を、私はほかに読んだことがない。ラストシーンはまるで私自身の記憶のようにまぶたにはりついて、未だに消えてくれない。

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