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3月のセレクト

中村 航さん

PROFILE

1969年(昭和44年)岐阜県生まれ。
2002年、『リレキショ』で文藝賞を受賞しデビュー。
04年『ぐるぐるまわるすべり台』で野間文芸新人賞を受賞。
『100回泣くこと』『デビクロくんの恋と魔法』『トリガール!』など映像化作品も多い。
プロボクサー・井上尚弥を描いたノンフィクション小説『怪物』を今月刊行予定。
現在、『小説トリッパー』(朝日新聞出版)にて小説「サバティカル」を連載中。

中村 航さん の
オシ本は・・・

『哀愁の町に霧が降るのだ』(上)(下)椎名誠 [著]/小学館文庫

青春というのは、幅が広い。どのレビューも似ているものはなく、素直に読んでみたいと感じた。なんとなく、書く人の青春が垣間見られるようなところも面白かった。世代や社会状況などが違えども、青春時代に悩んだり、揺れ動いたりというのは共通してあるもので、作品とレビューを書く人の青春が響き合っているようにも感じられる。個人的には、自分というものが少し出ているレビューの方が、書き手に共感しながら読み進められるので、面白いと思う。

中村 航さん のオシ本

私小説とエッセーの要素が混在し、著者自身がスーパーフィクションと語る作品。ボロアパートで共に暮らす大学生らが主人公だが、実にグダグダしている。一緒に鍋を食べたり、いたずらを仕掛けたり、仲間とのひと時がそのまま描かれるからこそ、生々しい。大人になる手前で社会に出ていかなければならない彼らの奮闘には、綺麗事など一切なく、真っすぐに伝わってくるものがある。エッセー風に現代の著者まで登場する型破りな作風は、初めてパンクロックを聴いた時のような衝撃を受けた。僕にとって永遠の「青春本」。

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