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4月のセレクト

保坂和志さん

PROFILE

1956年、山梨県生まれ。鎌倉で育つ。早稲田大学政経学部卒業。90年『プレーンソング』でデビュー。93年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、95年『この人の閾(いき)』で芥川賞、97年『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞。その他の著書に『あさつゆ通信』『カンバセイション・ピース』ほか、絵本作品に猫が主役の『チャーちゃん』(画・小沢さかえ)がある。大の猫好きとしても知られ『猫に時間の流れる』など「猫小説」の名著も多数持つ。本年度の川端康成文学賞受賞。

保坂和志さん の
オシ本は・・・

『猫のいる日々』 大佛次郎 [著]/徳間文庫

ブームと言われているだけあって、レビューされた猫本は多種多様でした。写真集あり生態あり俳句まで、それでも恋愛や自己啓発の本などと比べたらまだまだ猫本は少ないと個人的には思っています。飼いたくても飼えない人たちのためにも皆さんどんどん猫本を捜し出してください。

人に届くレビューは、理屈より思いです。ストレートな感動はもちろん、読後何日か経過したときに消えずに残っている気持ちを言葉にしてください。思いは批評に勝ります。――気持ちが理性に勝つところは、猫とのつきあいに似てますね(笑)。

保坂和志さん のオシ本

大佛次郎は明治30年生まれ。犬猫の命がまだとても軽かった時代にこんなに猫をかわいがっていた人がいたと思うだけで胸がいっぱいになる。どの文章も猫への深い愛情に満ちていて、不幸なことや悲しいことは一つも書いてない。かと言って単調なわけでは全然なく、歌舞伎座の本番中に舞台にのこのこ出てきた猫、なんて思いがけないエピソードもあり、内容は変化に富む(かわいい童話も収録されてます)。どの文章も、読み終わるたびに心が温かくなる。

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