今月の話題本レビュー

夜のピクニック

恩田陸

新潮社

定価710円(+税)

今この一瞬を愛おしく感じる青春小説の名作

 みんなで夜歩く。それだけのことが、どうしてこんなに特別なんだろう……。第2回本屋大賞を受賞した名作『夜のピクニック』は、夜を徹して80キロの道のりを歩き通す高校生たちの物語である。舞台は地方の進学校の全校生徒1200人が参加する伝統行事「歩行祭」。朝8時に高校を出発した生徒たちは、間に休憩と仮眠を挟み、翌朝の8時までに高校に戻らなければならない。最後の歩行祭となる3年生の甲田貴子と西脇融は、お互いを強く意識し合いながら避けてきた。ふたりの心の動きが友人たちとの細やかな会話を通して描かれ、彼らの秘められた因縁が明らかにされていく。大きな出来事は何も起こらないけれど、この一瞬のかけがえのなさが胸に迫る。