今月の話題本レビュー

幻色江戸ごよみ

宮部みゆき

新潮社

定価724円(税込み)

怪異を通して庶民の生き様を描く人情ホラーの決定版
 江戸の怪異譚(たん)と人情話が四季折々につづられる、切なくて心温まる12編の物語集。生と死のあわいで語られる庶民の生き様は、まさに“宮部ワールド”といえる深い味わいだ。死んだ母親が奉公に出した娘を思いやる「鬼子母火」、古道具屋の蔵にあるいわくつきの行灯の話「春花秋燈」、大女の醜女(しこめ)が、なぜか器量よしといわれ嫁にいく「器量のぞみ」、古着屋で買った夜着にまつわる幽霊譚「庄助の夜着」、臆病者の火消しが出会う不思議な頭巾の話「だるま猫」など、どれも社会の底辺で懸命に生きる名もなき人々の暮らしに、ふっと哀れを誘う不思議な物語が仕組まれている。著者にとっては3冊目の時代小説集。怪異を通して人間社会の不条理と情けを描く人情ホラーの決定版だ。

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