今月の話題本レビュー

破滅の王

上田早夕里 [著]

双葉社

定価1700円(+税)

戦争末期、生物兵器の実態を科学者の視点で描くサスペンス

1943年の上海。細菌学を研究する宮本は、上海総領事代理から重要機密文書の精査を依頼されます。暗号名「キング」と呼ばれる新種の細菌に関する文書で、この細菌は抗菌薬も効かず、治療法は皆無。生物兵器として開発されたのは明らかでした。宮本らにできることは、キングの菌株の行方を突き止め、使用を全力で阻止し、治療法を開発すること。当時、日本軍は中国大陸で、生物兵器の使用のみならず生体実験まで行っていました。そんな中、平和のために尽くしたいとの思いから、宮本は関係者たちへの接触を試みます。戦時下の中国、そしてドイツで、戦争の愚と良心との間で揺れ動く科学者たちの葛藤を描く、双葉社70周年記念刊行の歴史大作。