今月の話題本レビュー

メゾン刻の湯

小野美由紀 [著]

ポプラ社

定価1500円(+税)

銭湯シェアハウスを舞台に真摯に生きる若者たちを描く

どうしても就活する気にならず、内定のないまま大学を卒業した主人公のマヒコ。ひょんなことから、築100年の銭湯「刻の湯」に住み込みで働くことに。銭湯裏のシェアハウスには、過去にネットベンチャー界の頂点にいたという引きこもりのアキラさんほか、ひと癖もふた癖もある住人がいて、奇妙で平和な日々を送っていました。ところが、刻の湯に存続の危機が訪れたことで、物語は驚くべき展開に。何かしら心に闇を抱える住人たちは、マスコミやネットでバッシングを浴びる中、全力で肯定できる世界を見出していきます。社会からはみ出していても、普通じゃなくても、自分の歩幅で生きていいんだ。そんな希望の思いが、湯の香のようにあふれる青春群像劇です。